2011年4月4日月曜日

はじまり。

昔昔、男は苛苛していました。
いつものように煙草を吸い、酒を飲んでも苛苛は収まりません。
お気に入りの音楽を聴いても、心は晴れません。
それは昨日、ずっと恋焦がれていた女に振られたからでした。
「ちくしょう、俺があの子に振られたのは俺がとんでもない不細工だからに違いない。こんな俺には生きてる価値なんて無い。いっその事死んでしまおう。」
男は野垂れ死んじまおうと思い、森へ向かいました。
美しい花、凛々しく聳え立つ木々、そんなものに彼は糞程の価値も見出せません。
そうやって森の中をぐんぐん進んでいくと、何やら怪しいものを感じ取りました。
絵を描いている美男子がいたのです。彼にいくら話し掛けても、言葉が返ってきません。
彼は、うまく物が言えなかったのです。
なんとなく男は自分の全てを話したくなって、女にふられたこと、それが自分が不細工であること、酒を飲んでも好きな音楽を聴いても気が晴れないこと、全部話してしまいました。
するとその絵描きの男は、筆を物凄い速さで動かしはじめました。
描きあがったのは、さっきまで全てを話していた男の、綺麗な、綺麗な顔の似顔絵でした。
「俺の顔は、こんなに綺麗だったのか!女に振られたのは、あの女の趣味が悪いに違いない!きっとまたいい出会いがあるさ!生きよう!」と喜び、有頂天になりました。
すると、絵描きの彼は、喋りづらそうに、自分も不細工なのではないかと悲しんで、森に野垂れ死に来た事を告げました。
有頂天になった男は、事実素晴らしい美男子である絵描きの顔が如何に素晴らしいかを、幾千の言葉を使って表現し続けました。
絵描きの男も、喜び、有頂天になりました。しかし、そこで二人はげらげらとまるで馬鹿になったように笑い続けました。
二人は、見た目にこだわることがどんなにくだらない事か気付いたのです。
もう人生がたのしくてたのしくて仕方なくて、息が苦しくなるまで笑い続けたので、死んでしまいました。
そこから千年が経ち、時は西暦2010年、生まれ変わった彼らは再び出会いました。
そして、二人の言葉と絵で、本当の幸せを探す旅に出たのです。

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