2011年4月18日月曜日

嫌いではないけど

 僕は案外偏食でなくて、ピーマンさんでもにんじんさんでもなんでも食べられる。案外、と云うのは周りから言われるからそう云っているわけで、食わず嫌いもないし、食べたくないと思うのは下手食い奇食悪食ぐらいであって、何であろうと大抵の物はオッケー、日の丸である。男子というのは野菜が嫌いであるようなイメージが世間一般に知れ渡っているが、僕は大の野菜好きで温野菜といって鍋で野菜を蒸してマヨネーズやおポン酢をつけて食べるのが好きで、これが野菜本来の味を抜群に引き出してくれてなかなかいい。この温野菜に肩を並べるのがバーニャカウダーという料理で、アンチョビ、ニンニク、オリーブオイル等を混ぜ合わせたソースを熱したところに野菜を浸して食べる云わばフォンデュのような食べ物で、以前お付き合いしていた女性が僕の誕生日にイタリアンレストランカフェなる所に連れていってくれてそこで初めてこの料理を知った。いつか自分で作ってみようと思う。
と、僕の野菜好きを熱弁してみた所で何も始まらない、近頃女子供アマングヤングピーポーが云う”草食系男子”というカテゴリーは別段野菜を食べるからそう云うのではないし、そもそも僕は野菜は食べるが女性との付き合い惚れた腫れたに関しては驚く程がっついた所があって早稲田の石田純一と呼ばれてしまうのもそう遠くない未来である。靴下を今の内に脱いでおこかな。靴下は今まで存在していた表面をすっぽりと殺し、人格が変わったようになって飛んでいった、いきなり明朗快活、靴下の癖に。なんとなく窓を閉めると空気が変わってしまったみたいで不快。酒が飲みたいような飲みたくないような自分がよくわからない。毎日飲んでいる。別に酒を飲まなくてもいいのだけれど、飲んでもいいかという気持ち。己の中にもうひとつ人格があってぺろっと裏返すと変わってしまうような、そんな軽薄単純な人間です、僕は。屈した人間。そうか、僕は奴隷だった。毎日毎日朝の八時に起こされ鞭で叩かれて飯もろくに食わされず、隅田川の川原に三兆個に一個落ちていると云われる伝説の石「南無亞石」を探す作業をさせられている。僕はもうこんな巫山戯た事はやってられない、誰か、いないのか、連れ出してくれ、石を叩いて水を湧かし、宙を扇いで海を裂く、救いの手は差し伸べられないのかなあ、なんてことを考えていたらそこには一人の美少女がいて彼方という名前だという。魅せられるまま、惹かれるままについていったら喧騒な都会の町、ぬらぬらと犇めきあい、憎み、騙し、嘯き、殺し、悲嘆し、という見ているだけで悲しくなる人という生き物が億いる異世界へとついて来てしまった。ここで奴隷から抜け出した僕はもう働く必要はありませんが、やっとの思いで学校へ行き、人というもののやり切れなさを悲嘆しながら酒を飲んでいるわけで御座いますが、この世界の酒というのも女というのも中々の出来栄えで当面の間この世界から離れる心算は無いのです。