2012年6月17日日曜日

ヨッちゃんの好奇心

久々に会ったヨッちゃんは、女になっていた。
女というより、おかまという表現を使ったほうが正しいのだろうか、まあつまりはそういうことだ。バンコクあたりではレディボーイという名で、おかまが沢山いるのだという。
「あら、お久しぶりじゃない、コーちゃん。」
六本木の路地で突然名前を呼ばれたて振り返ると、おかまが手を振っていた。
「やだ、ごめんなさいね、私よ、私。吉野祥平。小学校で一緒でしょ??」
と言われてはじめて気が付いた。そのおかまはよく見れば確かに、六年二組で後ろの席だったヨッちゃんだったのだ。よく二人でいたずらをしては怒られていた、そのヨッちゃんだったのだ。


「いたずらはもうしないわよ、かわいい男の子にはいたずらしちゃうけどね、ふふっ。」
ヨッちゃんはアイスティーをストローから吸っていた。その仕草はなんだか妙に女らしくて、俺はかあっと顔が熱くなるのを感じてお冷やをぐっと飲み干した。
「そういえば、雑誌の仕事をやってるって聞いたけど。」
「あれはもうやめたわ、なんか飽きちゃって。今はセレクトショップのカリスマ店員よ。」
「っていうと、服屋さん?」
「やめてよそんな古臭い言い方、アパレルよ、ア・パ・レ・ル。わたし、今流行の最先端なの。」
「ああ、ヨッちゃん昔から飽きっぽかったもんな。」
ヨッちゃんはいつも新しいものを追い求めた。ビックリマンを最初に持っていたのはヨッちゃんで、皆がビックリマンを持ち始めた瞬間に遊戯王をちらつかせていた。そして皆が遊戯王を持ち始めた瞬間に、デュエルマスターズへと身変えしたのだった。その都度ヨッちゃんは

「だって、飽きちゃった。」
といってしれっとしているのだった。

ヨッちゃんは可愛いらしい顔付きで女の子にもモテるタイプだ(だった?)ろうから、もしかしたら女にも飽きちゃったのかもしれない。
「でね、取っちゃおうと思ってるのよ。」
「え、何を?」
「何って、決まってるじゃない、アソコよ。」
なんだかこの会話を早々にやめたくなってきて、用事があると嘘をついて帰った。家までの道で、俺はヨッちゃんとの小学校時代の数々の思い出を思い出していた。

「校門前のあのけやきの木を切ろう。」
ヨッちゃんはいつも突然作戦を思いついた。けやきの木は、のこぎりを二つ用意して朝のうちに汗を滝のように流しながら大木を切り倒した。一番壮絶だったいたずらは、池埋めだった。先に池から二匹の亀を水槽に救出しておいて、土や泥は深夜猫車で工事現場からひたすら運び込んだ。そして警備員が起きるまでのうちに池に土砂を流し込み、その上に水槽に花を生けておいた。次の日学校は休校になったが、俺たちの仕業と判明することはなかった。今、ヨッちゃんは自分の体に最大のいたずらをしようとしている。校門ならぬ、肛門の前にそびえ立つ大木を切り取ってしまおうとしているのだ。その日の俺はもう、全てを忘れたくてバーボンを一本空けてへべれけになったまま眠ったのだった。

それから半年後、ヨッちゃんにもう一度会った。ヨッちゃんは男に戻っていた。手術はしなかったらしい。それからヨッちゃんは初めての男とのセックス、女とのレズ(?)プレイについて語り出してまた嫌な汗が俺の体を包んだが、今度は安心して話を聞いていられた。それはきっとヨッちゃんの話し方が、小学生の頃のヨッちゃんに戻っていたからだろう。しかし何より俺が安心したのは、ヨッちゃんに男に戻った理由を聞いたときに帰ってきたこの言葉だろう。



「だって、飽きちゃった。」

好奇心旺盛なのも困ったものだ。



2012年6月8日金曜日

同棲している。デブの弟もいる。
デブはゲームばっかりしている
ちーちゃんの父親が社長らしき人。命を狙われているみたい。ビルの窓から飛び降りる。えぐい。
思わず抱きしめる。

テーゼでアルバイト ガエイにものを教えてると、昔のアルバイト、金髪でメガネをかけた美人。
「お願いします」
「ん?」
「いやおめーじゃねえよ呼んでねえし」
「あんた本当最悪だよねー」
「な、仲悪いんですね。」
何故中がわるかったのか?わからない
トルソーがきている服を見て
「わあっ素敵なライン!」
とかいっている。
俺が「オブジェですか?」とかいうけど無視される。
「ああ、服か。」
上がりの時間。小河さんに呼ばれるとどうも伝票に誤りがある。
ガエイを注意。
そういえば石黒賢みたいなサラリーマンがさっきからメニュー制覇しようとして頑張っている。
ビールの銘柄をきかれる。そんなビールはない。

銭湯にいく。大きな風呂桶が8200円ってどういうこっちゃ。そういえば親父といった。

近所に住んでる女の子姉妹はちょこちょこ男の子を変える。
ついぞ最近までイケメンと付き合っていたが、旅行鞄を持っているのを近所で見かける。
どうやら旅行の帰りらしく、金髪のロングモヒカンをうしろになでつけた不細工と
「旅行楽しかったねー、またいこうねー、」
と話している。彼女はあまり乗り気でない
ばいばいをしたあとその彼氏は
「あ!」
とかいってかけよりキスをする。ばいばいじゃあねーと走り去っていく。気持ち悪い。
女の子は俺を見ながら
「なんか文句あるの?」と言いたげである。
(そうだ、現実だとそうあの子はテーゼで一番可愛いあの子だ。)


伝次郎先生の生物化学 野菜、サラダ編
最初はテレビで見ていた。よくわからないスライムみたいなものができた。
親が「となりで授業やってるからいってこい」という。いく。ドアを開けるとスライムまみれになる。
小学生が多い。グループわけになると大学生ばっかだった。そういえばG組の生徒がけっこういた。
女の子姉妹もいた。どうやら日大らしい。この授業はインカレなのか。









図書館、豆粒ほどの虫と話す。
「つまりだ、お前の栄養を少しずつ俺にわけてくれればいいんだ。そうすれば俺はおおきくなれる。
俺は底が深いからな。」
目を見ていると底がない。気が狂いそうだ。いつの間にか俺が豆粒ほどで、虫は大きくなっていた。してやられた。





純一が裸足の理由

もう歩き続けて一週間が経つ、俺はいつまでこうして歩き続けていればいいのだろう、不思議と腹も減らずのども渇かないのだが、いったい俺は何故こうしてこの大草原を歩き続けているのか、そもそもどうやってここに迷い込んで来たのか検討も付かずにいた、と頭の中で解説を考えはじめたとき、草原が終わり川辺に出た。子供達が何やら石を積んでいるが、それを如何にも”私は渋谷で毎日を暮らしています”という風な若者達が崩して回っている。ああ非行少年、君たちは何故弱いもの苛めしか出来ないのだ。どうせやるならでかいこと、チームを率いて要人殺害とか、薬の売り買い、集団レイプ、そういったことをやればいいのではないか。近頃の若者は元気が無さ過ぎる。子供いじめなんてちっぽけなことで自分の悪さを再確認するなど愚の骨頂だ。目を合わせないようにその横をそそくさと通り過ぎる。川にはなにやら光を放つ魚が見える。鯉である。鯉であるのだが、紫や緑、黄色などの輝きを放っていて恐ろしく美しい。その美しい光景の真ん中に水面にうつった自分の顔が邪魔をしている。と、その額の真ん中になにやら穴があいているのを見て、やっと俺はすべてを思い出す事が出来た。そうだ、俺は死んだのだった。天皇を殺そうとして逆に、撃ち殺されて。つまりここは三途の川の橋の途中、先ほど石積みをしていた子供達も死人、それを壊していたのはつまり鬼である。それを考えた瞬間サーッと青ざめた。もし今俺の死体が下の世界にまだ存在しているとしたら、俺の顔は真っ青になっていることだろう。長年の謎が解けた。ああ、こんな世の中だったらもっと、女とか、酒とか、やっておけばよかったものが沢山ある。政治なんてものに興味を持ち学生運動のリーダーとして毎夜々々拳を振り上げ演説するならその口を女のひとりふたり口説くのにまわせば良かったのだ。俺は死んでいるのに死にたくなって川に身投げをした。それでこのザマなんだよ、ありとあらゆる女にもてたくてね。靴は揃えてきたかって?もちろん。だから、靴を履くときもくつしたは履いていないだろ?