2012年5月12日土曜日

金色のキャデラックと銀鋏

大したこだわりも持っていないが、髪の毛を切るときはヒロコに切ってもらうことにしている。APROは表参道にある有名な美容室で、そこに彼女の就職が決まった時俺は何故か誇らしい気持ちになったものだった。金がないので店には行けないが、俺は彼女の家に出向いて、バーテンダーという職業柄得意である夕飯、何杯かのカクテルを作ることで髪を切ってもらう対価を支払っていた。思えばヒロコは知り合った時から綺麗な髪をしていた。それでいて、引っ込み思案というかシャイというか、不格好な癖にぺらぺらと喋る俺とは正反対のタイプで、”内気”という俺がいくら望んでも取り戻す事が出来ないそれを持っている彼女が羨ましかった。