2011年12月16日金曜日

落語『船橋法典』



駅の名前云うのは、変というか、妙な名前のものが多いですね。たんに珍しいところから言えば、久喜、羽黒、安食なんていうのは関東でも珍しい駅名の部類でございます。宇都宮なんかに、かますざかなんて駅もあります。えらい攻撃的やなあー。なにかますんかなー。と思うわけでございます。ところが、これを上回る駅名がありまして。『クリはま』。えらいもんをぶつけてしまったなあー。クリとはまやで。クリ云うたらあれやし、はま云うたら蛤です。駅名決める時に落語家のひとりでも呼べばねえ、落語家なんてのはだいたい助べえですから隠語のなんやかんやがわかったでしょうから、止めたんでしょうけどねえ。とにかく自分の住んでいるところの駅名がおかしい云うんはすんごいいやなんです。僕もいつも嫌な思いしてます。競馬やってる方にとってはメジャーな駅なんですけれども、船橋法典云う駅があります。法典てなんや。法典云うたらあれですよ。ハムラビ法典とか、法律が書いてある本のこと云うんです。船橋法典云うたらなんや、市条例か。ただのローカルルールですよんなもん...。そんな名前なもんですから、友達なんかが来るとこぞって馬鹿にするんです。あるときなんてね、
「おう、よう来たな、よう来たな。なんか酒でも買うていくか」
「遠いな千葉は、よう来んわ。」
「まあ、まあ。ほら、ここが船橋法典や。」
「...ココアはやっぱりバンホーテン?」
「んな事云うてへんわ、フナバシホウテン、ここの駅の名前が船橋法典云うのや。」
「へえー、変な名前やな」
「見てみ、あそこに看板書いてあるやろ、”船橋”に”法典” 法典云うたらあれや」
「ココアやろ」
「ちゃうわ!ハムラビ法典とかあるやろが!」
「知らん、ココアのブランドか」
「違うわ!」


とまあ、こんな風にココア扱いされて馬鹿にされるんです。
でまた駅のまわりもあんまり栄えてない。競馬場だけは立派にあるんですけれど、それ以外はなーんにもない。もしかしたら僕が知らない施設があるかもしれない!と思ってインターネットで調べたんです。今すごいですね、インターネットでなんでも出てくる。写真なんかも出てくるんですね。そしたら駅前の写真が出てきたんですよ。そしたらね、駅前で小学生がなわとびやってる写真。なんでそこでやってんねん。あのー、駅前がタクシー乗り場みたいになって広場みたいになってるんですよ。でもそこが結構車の往来が激しいから危ないんです。なんもこんな駅前まで出てこなくとも家の前の車の少ない道路の前でやればええのに...。結局その時探しても何も目新しい施設は見つかりませんでした。ところがここ数年、船橋法典は目覚ましい進歩を遂げました。隣の駅、西船橋の駅が改装されたのを皮切りに、いろんな建物がたちはじめました。ラーメン屋、ファミリーレストラン、コンビニの10m隣にコンビニ。スーパーの50m先にスーパー。なんか違うもん作れ!!意味あるかいアホ!! ところが、ついにできたんです。大きな建物が。
「よっしゃーこれで有名な駅の仲間入りやーバンホーテンとかココアとか言われんですむわーやったーほほほー」おもて喜んでたんですね。
そいでね、できた建物の名前見たんですよ。


”ホーテンの湯”


こらあかん...まだココアで馬鹿にされるわ...




ー終ー