2011年12月16日金曜日

願い事

朝起きたら妖精がいた。曰く、なんでも願い事を一つ叶えてくれると云う、俺は
「みんなが俺のことを愛してくれますように。」
と頼むと、わかったと云って妖精は消えていった。
ベッドから起きて服を着替えると俺はタンスの角に小指をぶつけた。リビングに降りていくと嫁が”会社に遅刻する、はやく行け”と怒鳴り散らし、娘はいつものように挨拶一つせずに学校に出かけて行った。
 会社では上司から叱られ、同僚からはこの前の麻雀の掛け金三千円を払えと催促された。俺は(ああ、俺は幸せだったんだ、そしてこれからもずっと)と思った。何か、他の願い事を頼めばよかったと少し後悔したが、今はこれで十分なようにも思える。