2011年10月26日水曜日

シラスと蒸しキャベツの醤油みりん煮 

 高校生だったころ、当時付き合っていた彼女の家が所謂”共働き”で、部屋に潜り込んで彼女の母親が帰ってくるのに怯えながら服を脱いだものだった。行為を終えた後も、別段すぐ帰るという訳でもなく、そのまま晩御飯までご馳走になることが多かったのだが、その中で今でも忘れられないメニューがある。それが、主題に挙げた”シラスと蒸しキャベツの醤油みりん煮”であるのだが、彼女の両親、彼女、そして俺と食卓を囲んでいる中どうも俺だけがその皿に箸を運んでいたような気がする。

 その女の子と別れ、約一年もの間思い出を引き摺り回したものの、大学生となった今はもう、懐かしいと云うより、霞んで良く見えなくなってしまっている。それが突如、今日、夕飯を考えていた所ふと思い出したのだ。キャベツとシラスだけで作ることが出来、かつ酒に合い、簡単な料理!生憎レシピは教わっていなかったので、独力で似せる事とした。台所に行きキャベツとシラスがあるのを確認すると、まずはフライパンにゴマ油を敷き暖める。感傷に浸っているうちに油が爆ぜてきてしまった。キャベツがしんなりするまで炒まったら、しらすを入れ、そのまま醤油小さじ2、みりん小さじ1を入れ、よく混ぜたのち、フタをしてタイマーを3分、味を調整して出来上がり。全体的に付いた醤油の焦げ茶色が食欲をそそる。ビール缶を一本開けて誰もいない部屋で”いただきます”と云う。あいつと付き合って以降、とんでもない女もいたし、あいつを越えるような良い女もいた。”ずっと愛してる”と誓った自分を思い出して少し笑った。今、自分で作った料理は思い出の味よりもずっと美味しかった。